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11/09/2004

Boredoms

96年6月のリキッドルームでのライヴ評。「uv」掲載。

 久しぶりのボアのライヴ。いろんな人が来てたぞ。コーネリ小山田(人込みでいきなり肩を叩かれ、死ぬほどびっくりした)、暴力温泉芸者中原、高木完、小野洋子とショーン・レノン、ぜんじろう……etc 。音楽評論家とか音楽雑誌の編集は数えるほどしかいなかったのに、ミュージシャンとか文化人とか芸能人のたぐいがやたら多い。なんとなく、ボアを巡る日本の音楽シーンの状況がわかるような気がした。

 明石家さんまのパート2という感じのぜんじろうが山塚アイと付き合いがあったとは意外だが、彼のバンド<ノイザラス>は山塚の命名なんだそうだ。なんでも<ノイズ+トイザラス+のざらし>を合わせた造語らしい。<トイザラス>は有名なアメリカのおもちゃ屋、<のざらし>はおそらく山上たつひこのマンガの主人公・快僧のざらしのことだろう。ノイザラスの音がどんなものなのか知らないが、山塚に命名を頼むところをみると、意外にボアに近いものだったりして。ちょっと聴いてみたい気がするね。

 いま、ついうっかり<山塚アイ>と書いてしまったが、実はこの男、今は<ヤマンタカEYE>という名に改名している。いや、そのあとまた名を変えたような気もするが、とにかく山塚アイという名ではない。なぜ名を変えたのか、本人に聞いてないので理由は知らない。もしかしてすごく重要な意味があるのかもしれないが、この日のライヴでのボアは、いつも通りのボアだった。

 とはいっても、彼らがここで過去のボアの再生産に励んでいたわけじゃない。聴き手を挑発し、驚かせ、圧倒して「すげえ~」と言わしめる、そのありようが、まさにボアだったのである。

 昨年末に同じ場所でおこなわれたテクノ系イベントでのボアの演奏は壮絶なものだったらしいが、ぼくは見ていない。ほとんど彼らのライヴを見るのは1年ぶりだと思う。1年前のライヴはテクノをボア流に消化した実験色強いものだったが、今回のライヴは消化の度合いがさらに進行していて、なんとも形容しようのない、ロックでもテクノでもない、まさにボアダムズとしか言いようがない独特な世界を展開していた。とくに前半。

 テクノ/ハウス、ジャーマン・プログレ、現代音楽、アフリカ音楽、ハ-ドコア・パンクなどが渾然一体となったドラッギーなサウンドが延々と繰り広げられる。ビートがないから、客は呆然と立ち尽くすばかりだったかといえば、そうではなかった。たとえドラムスが規則的なビートを刻むことはなくても客は自分たちで見えざるビートを感知して、いつしか客席には大きなうねりが広がっていったのだ。いわば客がその場のリズムを創っていった。それは日本のロックの現場では滅多に見ることのできない光景だった。ボアダムズにはいい客がついている。

 ミュージシャンの方のヴォルテージもすごい。1曲毎、いやワン・フレーズ毎にテンションが上がっていく感じだ。果てしなく上り詰めていくさまは、まるで際限なく繰り返されるオーガズムのようでもある。

 後半部はおなじみ(?)のハ-ドコア・ベースのボアダムズ。代表曲のいくつかを交えての、絶叫パフォーマンス。山塚は吠え、わめき、飛び回り、走り回り、転げ回った。俄然客席はモッシュの嵐となる。ダブル・ドラムスのビートとブレイクのタイミングもばっちりだ。こういう昔ながらのボア・サウンドになると、曲によっては脱退してしまった吉川豊人の穴が気にならなくもなかったけど、メンバーの神がかった熱演は、それをすべて帳消しにしていた。

 とはいっても、まあ後半部はファン・サービスと見ていいだろう。現在のボアの本音が後半部にあることは間違いない。

 現在ボアダムズはレコード契約がないらしい。アメリカのワーナーは再契約に興味を示しているが、日本のWEAとは切れてしまったようだ。要するにレコード会社が満足するような数字が上がらなかったんだろう。数年前、アメリカのワーナーと契約が成立したとき、都内のホテルで大々的におひろめパーティをやったことを思えば、まさに忍法掌返し
といった感じだが、ま、遅かれ早かれ予期されていたことではある。すでにメジャー数社からオファーが来ているようだが(こういうことをこの場で書いていいものかわからないが)、どこと契約しても結果は同じだと思う。それはボアダムズが売れないとか商売にならないというより(それは単にプロモ-ションの技術の問題。ボアの音は十分ポップだ)、彼らをコントロールできるようなメジャーなど、日本には存在しないと思えるからだ。

 ライヴ毎、レコード毎に、前回の自己世界記録を更新し、ジャンルも時代も国境も言語も乗り越え、真にグロ-ヴァルなビートをたたき出していくボアダムズのスケールは、はかり知れないほどの勢いを感じる。それは、数年前彼らが頻繁にマスコミに露出していたときよりも、はるかに上と言っていい。断言してもいいが、もしボアをロックというジャ
ンルで捉えるならば、現在世界一はボアダムズである。そしてもしボアをテクノというタームで捉えても、やはり世界一はボアダムズだ。そしてそれを誰よりも理解しているのは、金儲けしか頭にないレコード会社の人間でもなければ、人の尻馬に乗るしか能のないマスコミの人間でもない。リズムなきサウンドに時代のビートを感知した、この日リキッド・ルームに立錐の余地なく集まった多くの無名の子供たちなのである。

 とにかく、本当に凄いライヴだった。ボアのライヴ評を書くたび、こんなことを言ってるような気もするが、本当なのだから仕方ない。見るたびにこっちの期待をはるかに上回るショックを与えてくれる存在として、まさにボアは別格である。

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