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11/02/2004

DAF

 03年のWIREで来日したときのインタビュー。ミュージックマガジン掲載。

 80年代ノイエ・ドイッチェ・ヴェレ(ジャーマン・ニュー・ウエイヴ)の立役者DAFが再結成してアルバムを制作中という報を聞いたのはちょうど1年前、石野卓球からだった。石野の「来年のWIREに呼びたいんだよね」という言葉通り、DAFは再結成アルバム『Funfzehn Neue Daf Lieder』をひっさげ、ついに日本の地を踏んだ。全盛期の83年の来日が突如中止となってから20年越しの宿願が叶ったのである。

 もういろんなところで書いてきたことだが、DAFとの出会いは本当に鮮烈だった。当時通い詰めていた六本木のニュー・ウエイヴ・ディスコで、出世曲「Der Mussolini」を大音量で聴いたときの異様な衝撃は、いまだに忘れられない。ドラムス、ワン・コードを執拗にリフレインするシンセイサイザー、そして男臭いヴォーカル……聴けども聴けどもたった3つの音しか出てこない究極のミニマル・サウンドは、コロンブスの卵ともいうべき彼らだけのオリジナルだった。快楽主義に徹したダンス・ビートは、その後のハウス/テクノに絶大な影響を与え続けている。『Funfzehn Neue Daf Lieder』は往時と何ら変わらぬDAFサウンドなのに、古びた印象はまったくないという驚きの傑作だ。

 WIREのサウンド・チェックの合間を縫い、わずか10分という厳しすぎる制限時間で、取材は始まった。もちろん相手は全盛時のふたりのメンバー、ガビ・デルガドvoと、ロベルト・ゲールdsのふたりである。

――再結成の動機を教えてください。

ガビ「いつかまた一緒にやることになるとは思ってたんだ。ごく自然な流れだったよ。常に電話とかで連絡は取り合ってたし。3、4年前からお互いに顔を合わせる機会もずっと増えたし。じゃあ、スタジオに行って、どうなるか見てみようってことになったんだ。そうしたら、すぐに曲ができたんだよ」

ロベルト「ずっとやりたかったんだよね」

G「でもマーケット・リサーチとかは一切ナシだった。実際に落ち着いて、カムバックのレコード会社とか全部が決まるのに3年くらいかかっちゃったしね」

――80年代の自分たちと比べ、音楽に対するアプローチは変わりました?

G「アーティスティックなアイディアは変わっていないけれど、機材やプロダクション・テクニックは随分変わったね。アイディアは昔と変わらず、ハートフルかつラディカルだし。何の準備もなくスタジオに入るのも変わらないな」

R「それってアーティストらしいだろ」

G「何でも同じだと思うけれど、例えば、画家だったら先にどんな絵にしよう、と決めて描くわけじゃないだろ。まず、絵筆をとって、絵の具を混ぜて描いてみる。音楽もそれと同じだよ」

――最近になって、80年代のニュー・ウエイヴに対する評価が高まっていますけど、どう思います?

G「特に感慨はないよ」

R「ぼくらには関係ないと思っている」

G「懐メロ的に扱われるのは抵抗があるな」

R「我々は前に進むのみさ。後ろは振り向きたくないね」

G「ただし、80年代というのは現代に続く非常に重要な時代だったと思う。まずPCの台頭だ。シンセサイザーとかシーケンサー、ンピューター音楽はこの時代に生まれたものだ。デジタル時代の幕開けだった。新しい千年紀の初めだと思うよ」

R「それ以前はコンピューター音楽というのは限られたジャンル、限られた層を対象としていただけだった」

G「いまではまったく身近なものになったよ。誰でもPCを持つようになったからね。80年代にぼくらが始めた頃はまだまだ手が届かないものだった。いまなら3000ドルでアルバムができるけれど、当時は50万ドイツマルク必要だったんだ。スタジオに3ヶ月いたら、その間の使用料は一日2000マルクだよ。現代はとても民主的になって、誰でも平等に技術の恩恵にあずかれるようになったよ」

R「自分の部屋でレコードができる時代だからね(笑)」

G「いいことだよ。民主的だし、アーティストが自分で制作ツールを手にすることができるようになったんだから」

――80年代のノイエ・ドイッチェ・ヴェレのムーヴメントの渦中にいたわけですが、その中で自分たちが何かを達成したと言う実感はあります?

G「音楽だけじゃなく、歌詞の面でも大きいと思うよ。ノイエ・ドイッチェ・ヴェレになって(ほとんど)初めて、ドイツ語の歌詞がラジオで流れたんだからね」

R「それまでラジオで流れるのはずっと英語の歌詞だったからね」

G「ドイツ語の曲は保守的な音楽、民謡くらいしか流れなかった。60歳代以上向けのね。だけど、英語じゃ自分たちの気持ちを正しく表現できない。いいアイディアがあって、強力な歌詞を書きたくても、翻訳する過程で失ってしまう。でも、ノイエ・ドイッチェ・ヴェレという新しいスタイルの音楽が出てきて初めて、みんな自信を持ってドイツ語で歌えるようになったんだ。イギリスやアメリカのロックンロールの真似をしなくて済むようになった。自分たちの音楽を手に入れたんだ」

R「英語の歌詞を初めて拒否できたんだ」

G「ノーモア・アメリカン・ポップ帝国主義!」

R「70年代後半、80年代初頭には確かに新しい動きが始まっていた。みんな何かが変わることを求めていたと思う」

G「ぼくらも新しいことに挑戦してみたかったんだ。だから、歌中心ではなく、曲が中心になった音楽を始めたんだ。言いたいことは何でもいい、ミニマリスティックにハートフルにやればいい」

――あなた方独特のミニマル・サウンドにはどうやって到達したんです?

G「ロベルトとぼくがデュッセルドルフで出会って、自分たちのやりたい音楽のコンセプトを探すところからまず始まって、その後で、地下室にこもった。リハーサル・ルームにね。彼がドラムを叩いて、ぼくが歌ったんだ。とってもミニマルだろ。当時はまだシーケンサーがなくってね。発明される前だったんだよ。ぼくらの方が先取りしてたんだ」

R「発明される2年前だったんだよ」

G「76年の終わりかな。シーケンサーがふたりで音楽とドラム・サウンドを作る唯一の方法なんだけど、それはまだなかった。最初からデュオでやろうと考えてたんだよ。でも、どうやったらいいのかわからなかった」

R「それで、少数のミュージシャンでやることにしたんだ。はじめはふつうのバンドだった。キーボードがいて、ベースがいて。ギターも。最初はサックスとかもいたんだよ。でもソロとかは一切なし。最低限の音しか必要なかったからね。でも、ぼくららしくないんだ。変な感じだった。シーケンサーやシンセサイザーの方が楽だし、自然だし」

G「それで機械で代用することにしたんだ」

R「徐々に自分たちのやりたい方向に持っていったんだ。よりミニマルな方向にね」

G「ベースが去り、キーボードが去り……」

R「グループでやるよりうまくいくんだ。最初は4人だったけど、成功したのは2人になってからだからね」

G「アートは最小限であることが一番だよ」

――今後の方向性は?

G「なんとも言えないね。さっきも言った通り、ぼくらは基本的にスタジオに入ってから、曲も決めていく感じだから。ストーリーも決めないくらい。アーティストだからね」

R「次のアルバムも、ひょっとしたら過去の作品と似ているかも知れない。似てないかも知れない。だけど20年経ったからって、まったくちがうものをわざわざ作る必要もないだろう。急にポップになっても変だし」

G「今回もスタジオに入って、もしまったく異なるものができてきたら、ちがう名前、「プロジェクトX」とでも名づけようと思ってたんだ」

R「スタイルは変わらないね、基本的に」

G「15曲の新曲で、過去のリミックスはなし。ぼくらはノスタルジックな人間じゃない。一番楽でウケるのはグレーテスト・ヒット・リミックスだろうけど、それはぼくらじゃない」

R「このやり方は、型に嵌めるような感じだけど、実際はそうじゃないんだ」

G「最初の曲は3時間でおおよそ出来てしまったんだよ。20年近く一緒にやったこともなかったのに。1時に始めて、5時には完成してたんだ。それを聞いてたみんながびっくりしてたよ」

 訛りの強い英語をつんのめるような早口で喋るふたり。むかしとさほど変わらぬ印象のロベルトに対し、メガネをかけ、来日前にケガをしたという右腕をギブスで吊り、やせこけた頬に白髪混じりの無精髭をはやしたガビはすっかり年をとった印象で、正直ライヴへの不安が募ったが、まったくの杞憂だった。

 ガビがヴォーカル専任、ロベルトは機材操作(なんでもMDの音源をイコライズしていたらしい)、さらに生ドラマーという編成。ドラムのリズムはときおり怪しくなったりするのだが、これが味。レザーのスーツの胸をはだけ、ギプスをはめた腕を振り回し、ミネラル・ウォーターを何度も頭からぶっかけ、ずぶぬれになって踊り、叫び、客席を指さしてアジテイトしまくり、曲が終わるごとに「ダンケシェーン!」と絶叫するガビは、震えがくるほどカッコ良かった。正直、あれほど燃えたライヴは久しぶりで、はやりのメロコアにモッシュする十代のガキのように暴れまくってしまったのである。DAFの本質はテクノではなパンクであることをはっきりと示したアグレッシヴかつエネルギッシュなライヴだった。究極のワンパターンとも言えるバンドだから、今後の発展性という点では未知数だが、ともあれ20年以上も前の彼らのサウンド・コンセプトが現在でも有効であることをはっきりと示したライヴだったのである。

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