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11/02/2004

Janet Jackson

 アルバム『ダミタ・ジョー』のレコード評。ミュージックマガジン掲載。04年。

 3年ぶりの新作。歌詞を見てびっくりだ。全曲の半分近くがセックス・ソング。それも「ほのめかす」なんて程度のものではなく、「ヤりたい」「イカせてあげる」「ここを触って」とあけすけな表現ばかり。ペアレンタル・アドヴァイザリー・ステッカーはダテじゃない。ジャケットでも、オン歳37歳とは思えない鍛え上げた肢体を気前良くさらけ出し、大サービスもいいところ。例のスーパーボウルの胸露出事件もそうだし、前作『オール・フォー・ユー』ツアーのライヴDVDにもわ
ざわざ衣装替えシーンを織り込んだり、際どいパフォーマンスで話題を呼んだ「ウッド・ユー・マインド」の映像を5パターンも入れるなど(笑えたが)、最近のジャネットはほとんどニンフォマニアの域である。

 だが、にもかかわらずここでのジャネットはあまりエロくない。言葉は露骨ではあるものの、ほとんどが女性の側から一方的に促し求める表現ばかりで、性愛のエロティシズムというより女性の貪欲さや強さのほうを感じさせるからだ。男を磔のように縛り付け、一方的に責める「ウッド・ユー・マインド」のステージ・パフォーマンスが象徴的だが、そこに支配される「オス」はいても、対等な人間としての男の影は希薄だったりする。

 ジャム&ルイスを中心とした制作態勢に変化はなく、おなじみダラス・オースティン、ベイビーフェイスのほか、前作で新味を出したロックワイルダー、気鋭カニエ・ウエスト、スコット・ストーチ、スウェーデンのアンダース・バッゲなどの豪華布陣。グリッヂ音を使ったオープニング(1)や、エレクトロニカっぽいニュアンスもあるバウンシーなダンス・ナンバー(4)(どちらもジャム&ルイス)が目新しいぐらいで、サウンド的な新味は薄いものの、完成度の高さはさすが。録音の良さも特筆ものだが、とはいえ、そこには余白がない。鳴っている音がすべて、ほかにはなにもなしという割り切りは、ハリウッド超大作やコカ・コーラやマクドナルドと同じ類のアメリカ音楽資本の世界戦略商品そのものだ。「ダミタ・ジョー」とは彼女の本名(ミドルネーム)だが、『ヴェルヴェット・ロープ』以前はほんのりと伝わってきたジャネットの体温は、そこからは感じられない。いくらあけすけな言葉を発しても生々しいエロティシズムを感じさせない現在の彼女は、その主役にふさわしいのかもしれない。インタールードで語られる彼女の言葉も、本音というよりは作られたものに聞こえてしまう。

 前出のライヴDVDを見て、あまりに完璧なエンタテイナーぶりに驚嘆したが、同時にあまりに大きく、強くなりすぎたポップ・アイコンとしての危うさも、感じた。ジャネットは転換期に来ていると思う。

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