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11/02/2004

ユーミン&スピッツ

 週刊SPA!のコラム。02年執筆。

 「あなたは朝起きたらユーミンになっていました。さて、何をしますか」

 かってこんな質問をされたミュージシャンがいる。答えは「銀行で金をおろす」。10年以上前、まだバブルの残り香が漂うころの話だ。

 音楽家として最高の地位にいながら、決して尊敬の対象にならない。彼女の成功は、札束で頬をはたく金満ニッポンの象徴だった。かって「私が売れなくなるのは、都市銀行が潰れるような時代になること」と言い切った彼女は、まさにそうした時代の到来とともに、かっての威光を失い、トップの座から滑り落ちた。

 そしていま、残された膨大な量の作品から浮かび上がってくるのは、まぎれもない彼女の天才である。初のカヴァー・アルバム『Queen's Fellows』は、それをまざまざと示している。カヴァーしたアーティストの何人かが「以前はユーミン的価値観に違和感があった」と表明しているのが象徴的だ。バブルがはじけ、とめどない社会と経済の収縮のはて、繁栄の申し子ユーミンは、初めてミュージシャンとして正当に評価されたのだ。

 そして、彼女の凋落と入れ替わるように登場したスピッツは、そんなユーミンとは対照的に、「自分たちが親より貧しくなる世代」の代表格であるにちがいない。相容れるはずのない両者は、しかし、エールを交わし合うようにお互いのカヴァー集に参加している。ただ誰よりも美しく切ない曲を書く。それ以上は望まない。自分たちはただ、作品で評価されたいのだ。彼らを結びつけたのは、そういう思いだったのかもしれない。ユーミンが歌うスピッツの曲はまるでユーミンの曲のように、スピッツの歌うユーミンの曲は、まるでスピッツの曲のように聴こえる。それが彼らのプライドなのだろう。

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