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11/09/2004

ピーズ

 96年5月のリキッドルームのライヴ評。「uv」掲載………だったと思う。

 開演予定時刻より15分の遅刻。あわてて会場に駆けつけたら、エレベ-ターが故障だと。7Fまで息せき切って駆け上がる。運動不足のオヤジの身には実に応える。受付でレコード会社の人に「よろしくお願いします」と挨拶されたが、息が切れて返事ができない(本当)。別に無視したわけじゃないんです。あ-情けない(泣)。

 どうせガラガラだろうと思っていたら、とんでもない。会場は立錐の余地もない超満員。こんなに人気があったとは。当然女の子が多いが、けっこう男も多い。
 
 演奏が始まる。うーん……ぜんっぜん、変わってない。ぼくがこのバンドのライヴを見るのはおそらく7~8年ぶりぐらいだと思うが、見事なぐらい変わってない。ハルの乱暴なMCに始まり、ラフでワイルドな歌いっぷり、演奏、もちろん楽曲。全然うまくなってないとこまで含めて、初代ドラマーのマスヒロがいたころと寸分違わない。全体に驚くほど昔のピーズのイメージそのままである。

 だが、コンサートが進むにつれ、少し違う面も感じられてくる。どことなくオヤジ臭いのである。といって悪ければ、すごく愚痴っぽい。どんなにテンポのいいロックンロールでも、どことなく侘しいのだ。昔のピーズの演奏はとにかく威勢がよく元気だったが、今のピーズはどちらかというと侘しさ切なさの方が強い。

 ぼくはピーズの前作『とどめをハデにくれ』が大好きだった。世の中、あれほどショボクレたレコードがあったろうか。なにをやってもダメな自分に対する愚痴と諦めと苛立ちがごっちゃになって、たくまざるペーソスが浮かび上がってくる。名盤であった。

 誰だってお金があって、かわいい彼女(あるいは、カッコいい彼氏)がいて、人望もあって、勉強も仕事も遊びもバリバリやって、カッコよくシティ・ライフを過ごせりゃ言うことない。だが現実はそれほど甘くないのである。理想と現実のギャップに気づき、悩み、そして居直る。4畳半一間でウジウジと、何をするでもなく、ただヒマだけを持て余してゴロゴロしている。そんな生活実感はファースト・アルバムのころから感じられたが、ことに『とどめをハデにくれ』から、ある種の哀愁さえ帯びてきたのである。最新作『どこへも帰らない』も、実に染みる。それはやはり、ピーズもぼくも年をとったから、なのかもしれない。

 会場にいる子たちも、なんだか生きることに不器用そうな連中ばかりである。恰好だってお世辞にもファッショナブルとは言えない。だいたい、いまどきこんなオ-ルド・スタイルのシンプルなロックンロ-ル、他にやる奴もいないし聴く奴もいないよ。でも、そんな頑固さと、時流にうまく立ち回れないカッコ悪さこそは、ぼくも含めた多くのファンの偽らぬ実像なはずである。そして彼らは、情緒に溺れる前に乱暴に聞き手を突き放してしまう。そこがいい。

 おそらくこの先も彼らが大きく変わることはないだろう。ハルは自分のことを歌いつづけるしかないし、この先ピーズがバカ売れして生活が一変するなんてことも、まずありえないだろうから。頑張って下さい。出世しない程度に。


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