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11/02/2004

ROVO

 アルバム『Flage』発売時のプレスリリース及びパンフレット用原稿。02年執筆。

 眩い光の彼方に吸い込まれていくようなスペイシーでサイケデリックな音の渦。生き物のように脈動する歓喜と陶酔のサウンドウエイヴが、途方もない快楽をともなって、まるで永遠に続く螺旋階段をどこまでも登っていくように沸き上がってくる。ROVOのもたらす力強くセンシティヴな音は、オーガニックでスピリチュアルで、ときにソウルフルでさえある。

 ROVOは最強のライヴ・バンドだ。そして稀なるスタジオ・バンドでもある。96年の結成以来、彼らほどコンスタントに質の高いライヴを展開し、優れた作品を送り出してきたバンドは例を見ない。とくにここ2~3年ばかりのライヴの充実ぶりは素晴らしい。最近1年ほどの間に首都圏周辺でおこなわれたROVOのライヴの大半を見ているが、一度として期待を裏切られたことがない。それどころか、そのつど新しい発見と豊かなイマジネーションと大いなる喜びを与えられている。待望の新作『FLAGE』はそうしたROVOの活動の、現時点での集大成であり、かつ到達点である。

 ROVOは80年代からアンダーグラウンド・シーンで活動してきたエレクトリック・ヴァイオリン奏者・勝井祐二と、ボアダムス、想い出波止場、羅針盤などで知られる関西の鬼才・山本精一gのふたりを中心に結成された。勝井がロンドンで体験したレイヴ・パーティーの衝撃が、その原点だった。メンバーはほかにアルタード・ステイツやティポグラフィカで知られる芳垣安洋ds、ザ・スリル、ボンデージ・フルーツで活動し、セッション・ミュージシャンとしても売れっ子の岡部洋一ds、バズーカ・ジョー、高円寺百景の原田仁b、ダブ・ククワッドの益子樹kbdと中西宏司kbdの7人。それぞれアンダーグラウンドで長いキャリアを持ち、卓抜したセンスと技量を持つミュージシャンたちが、ミニマルなフレーズをポリリズミックなアプローチで繰り返すことで、テクノもトランスもプログレもジャズ・ロックもはるかに超えるスケールの、ドラマティックでグルーヴィなサウンドスケープを現出している。その超絶的な音楽体験は、一度はまりこむと二度と抜けられないほど衝撃的なものだ。

 ROVOの名を一気に高めたのが、ROVO第一期の集大成とも言える、43分ワントラックの大作『PYRAMID』(00年)と、その直後のフジ・ロック・フェスティヴァル出演だろう。翌01年にはジャズ・ロックに通じる硬質な器楽的アプローチに挑んだ意欲作『SAI』を発表、2度目のフジ・ロック出演をはさみ、今年になってジョン・ゾーン主宰のインディ、ツァディックからニューヨーク録音の2枚組ライヴ『TONIC 2001』を発表。さらに夏から秋にかけて通常のライヴに加えライジング・サン・ロック・フェスティヴァル、武尊祭、朝霧ジャムといった各地のフェスティヴァル、レイヴを総なめし、その合間を縫って制作されたのが新作『FLAGE』なのだ。

 各地のライヴですでに披露済の曲を中心に全6曲74分、6曲中5曲が10分を超えるという大作揃いだ。インプロヴィゼーション主体だった前作に対して、緻密なコンポジションと起伏に富んだアレンジ、録音一ヶ月に対して三ヶ月かけたという細密をきわめたミックス・ワークが施され、聴き込めば聴き込むほど新しい風景が広がる。ライヴでの爆発的な上昇感と、スタジオならではのエクスペリメンタルなアプローチが理想的に合致した、現時点での彼らの最高傑作と断言したい。

 ここ最近、さまざまな実力派ミュージシャンたちがジャンルを超え順列組み合わせのように複数のユニット/プロジェクトを同時進行させる例が目立ち、そのカオス的状態の中から新しい音楽が生まれている。ROVOはその中心的存在と言っていい。代表的なものを挙げるだけでも、勝井は渋さ知らズ、ボンデージ・フルーツ、PERE-FRU、山本はボアダムズ、羅針盤、MOST、ソロ、芳垣は渋さ知らズ、デート・コース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン、ヴィンセント・アトミックス、大友良英ニュー・ジャズ・クインテット、エマージェンシー、益子はダブ・スクワッド、ASLN、岡部はボンデージ・フルーツ、ソロ、原田は高円寺百景、中西はダブ・スクワッドといったバンドをROVOと並行して運営し、それぞれで得た成果を相互に還元することで、さらにハイブリッドでスケールの大きなパースペクティヴを獲得しているのだ。『FLAGE』と前後して羅針盤、山本精一ソロ、ASLN、ヴィンセント・アトミックス、デート・コーズ・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンのアルバムがそれぞれ発表される。これらはROVOを起点とした新しい音楽ネットワークを形成し、アンダーグラウンドでは大きな動きとなっている。さらにスーパーカー、クラムボンといったメジャー・サイドのポップ/ロックのミュージシャンたちをも巻き込み、シーン全体を席巻する一大潮流となりつつあるのだ。

 テクノ、ダンス・ミュージック、ロック、ジャズといったジャンルを越境し、圧倒的なスケールでしなやかに鳴るROVOのような音楽は、世界的規模で見てもほとんど例がない。来年あたりには期待される本格的な海外進出で、彼らの引き起こす波はさらに拡大していくだろう。言葉がなくても、いや言葉がないからこそ、その音楽は国境を超えジャンルを超え人種を超えていく。そこには音楽の持つ大いなる可能性が潜んでいるはずだ。

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