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07/09/2006

第9回フジロック(2005)

ミュージックマガジン2005年9月号掲載。

 3日間、雨の降らない日はなかった。足元が悪いので疲れも倍増。寒さと冷たさに耐えながら黙々と移動しライヴを見る。これはいったい何の難行苦行かと溜息が出るが、いいライヴに巡り会えば、すぐ忘れてしまう。単純なものである。

 毎年必ず巻頭カラーでリポートを書いていたフジロックも、今年はこのページで。まあ、イヴェントとしてすっかり定着・安定して、今年もまたいつものように無事開催され、いつものように楽しい三日間だった、ということであり、それ以外の特筆すべきトピックはなかったのは確かだ。去年は3日間通しのチケットのみだったのが、今年また1日券が復活したのは、3日間通し客だけだと地元にお金が落ちないという地元の要望を受けてのものらしいが、結局前夜祭を含む4日間で12500人と、過去最高の動員。そのわりに移動などにあまりストレスを感じなかったのは、動線の改善などがうまくいっている証拠。いっぽう動員の増加で、ゴミなど会場環境は悪化していた。規模が大きくなるにつれ、フェスの理念を理解しない者も増え、当初の理想郷からはかけ離れていく。仕方のないことではあるのだが。あと気になったのは、オレンジ・コートのラインナップの弱さ。このステージをどうしたいのかというポリシーが感じられない。渋さ知らズの不破大輔がプロデュースした初年度のような魅力的なラインナップを用意できなければ、今後ステージの存在意義さえ問われることになるだろう。

 全体のラインナップをみると、今年はダイナソーJr、ポーグスなど再結成組が目立っていたのが特徴。だが新曲もなく当時の曲しかやらないノスタルジーにつきあう趣味はない。そのわりにギャング・オブ・フォーのライヴは見たのだからいい加減なものだが、ファーストとセカンドの曲しかやらず、演奏もほぼ当時のままという彼らの演奏は、しかし、身震いするほどのインパクトと斬りつけるような鋭角の鮮烈なサウンドで迫ってきたのである。25年前と同じ音なのに、全然古くないばかりか、時代を撃ち抜く衝撃すら感じる。体の奥から沸き上がってくる衝動に身を任せ激しく動き回り、金属バットで(なぜか)電子レンジを叩き壊すヴォーカルのアクションを見ながら、ロックにとってこの25年の進化とは何だったのだろうと自問自答せずにはいられなかった。いっぽう小粒ながらジャム+ワイヤー+初期XTC的なロックンロールが小気味よかったフューチャーヘッズのような若いバンドからも、さして新しい感覚や画期的な方法論が見いだせるわけでもない。それがつまり、ファンの高齢化云々ということ以上に、再結成バンドが流行り、それがさしたる抵抗もなく受け入れられている最大の理由かもしれない。

 いっぽう、25年前にはありえない音楽をやっていたのが最終日のホワイト・ステージのトリに登場したシガー・ロス。詳しくは来月掲載予定のインタビュー記事で書くが、2年前の来日公演時のような、触れれば凍傷になりそうな張りつめた緊張感はやや薄れたものの、相変わらず孤高としか言いようのない清冽で鮮烈な耽美世界は、たとえばピンク・フロイドやゴッド・スピード・ユー・ブラック・エンペラーやレディオヘッドといった先輩たちの影響はあるものの、それらをはるかに超えた奥深く神秘的な感動を生んでいた。ギャング・オブ・フォーの素晴らしさを認めてなお、05年のいま、正しいロックとはシガー・ロスである、と断言したい。白い遮幕と簡素な照明、亡霊のような映像のみの舞台演出は、たとえばすさまじい情報量で圧倒した3年前のコーネリアスとは対照的だったが、しかし同様に最大限の効果をあげていた。

 甘美でセンチメンタルなエレクトロニク・ポップで酔わせたロイクソップ、激シブなソウル・ファンク感覚でいつまでも聴いていたい、と思わせたアンプ・フィドラー、超絶技術とウルトラ・ハイ・テンションで驚異のラテン・プログレ・ハードコアを展開したマーズ・ヴォルタ(ギター・プレイがサンタナみたいだったのは笑った)、タンゴとスカの近接性を再認識させたワビサビの極致スカ・クバーノ、すさまじい気合いのインプロヴィゼーションで圧倒したROVO、相変わらずのお下劣な馬鹿騒ぎでシガー・ロスの感動を見事に消してくれた赤犬と、いいアクトが揃っていたと思う。

 来年、フジロックは10周年。第1回から欠かさず参加してきたが、あの悪夢のような嵐の天神山から10年でここまで来たかと、本当に感慨深い。この10年、ロックは進化しなかったかもしれないが、ロックを取り巻く環境は確実に良くなっている。その一翼をフジロックが担ったのはまちがいないのである。

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