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07/09/2006

第2回フジロック(1998)

ミュージックマガジン1998年9月号掲載。

 あの悪夢のような嵐の1日から1年、今年のフジ・ロックは成功だったと言っていいと思う。もちろん晴天に恵まれたことが大きかったのだが、主催者側の手際もはるかに良くなっていたし、客の方も自己管理の意識が徹底しつつあることをうかがわせた。また富士の裾野に戻る来年に真価が問われることになるとは思うが、ひとまず今後への期待と希望を抱かせた今回のイヴェントだった。

 個々のバンド、アーティストの演奏に関しても、それぞれ大舞台にふさわしい熱演だったと言っていい。ことに初日は、さほど新機軸を期待できないはずのベテランが底力を発揮するなど、見応え十分だった。とくにニック・ケイヴの気迫十分のステージは圧倒的で、フェスティヴァル全体を通じてもっとも強烈な印象を残した。

 ギターウルフはワンマンよりこうした形式のほうが気が乗るようで、とくに師匠格のイギー・ポップと同じステージともなれば気合も入れ方もちがったろう。毎度お馴染みの内容ながら、実に楽しいライヴだった。

 そのイギーはぼくには期待はずれなステージだったが、一方のメイン・アクトであるビョークは想像をはるかに上回る実に巨大なスケールのアーティストに成長していた。弦楽四重奏団を導入したふくよかで瑞々しくニュアンスに富んだ演奏、奔放に駆け抜けるパフォーマンスの美しさ、どれも超一級のアート・フォームでありエンターテインメントだった。こうした大舞台でも臆することなくお金も手間暇もたっぷりと効果的にかけて見せ、聴かせ、酔わせる手際の鮮やかさは、全盛期のプリンスにも匹敵すると思う。

 二日目の目玉はコーン、エイジアン・ダブ・ファンデーション、ゴールディといった初来日組だった。2日前に行われた前夜祭パーティでも見たエイジアンはいかにも若々しいライヴ。ステージ上の運動量の多さがまだ成長過程にある彼らの将来性を語っているようだった。

 コーンは後方客席ではPAの状態が悪く実力のほどがまったく伝わっていなかったようだが、前のほうで騒いでいたぼくは十分満足できた。昨年のフジ・ロックの目玉だったレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンよりバンドとしてのスケールははるかに上だし、おそらく今後5年ぐらいの米オルタナ~ヘヴィ・ロック・シーンはこのバンドを中心に展開していくはずという確信はさらに強まった。

 ゴールディは予想以上に客席を煽りまくるパフォーマンスに興奮。女性ヴォーカルをフィーチュアしたソフィスティケイト路線とハードエッジでノイジーな曲に大別されたが、何事につけ過剰なこの男には、後者の性急さ、饒舌さの方がはるかにふさわしかったと思う。

 今後の課題として残りそうなのが出演者の選定の問題だ。2日目のミッシェル・ガン・エレファントの際、再三に渡って演奏が中断した。過熱した観客の様子に危険を感じた主催者が中断を指示したものだったが、コーンでまったく問題なかったのだから、観客の側の問題が大きそうだ。昨年のイエロー・モンキーもそうだが、ふだん日本のバンドのおとなしいライヴしか体験していない少女たちがお目当てのバンドを少しでも前で見るために最前列に陣取っているところに、暴れることに慣れているパンク野郎どもが後ろから押し寄せてもみくちゃになってしまう、という状態はとても危ない。ノリの近いバンドを同じステージに集める、という工夫も必要と思う。

 また、あまりにロックに偏り過ぎたメンツも、来年以降は一考を願いたいところ。ヒップホップやテクノなどのクラブ系は当然として、たとえばワールド・ミュージック系アーティストの出演なども検討していただきたい。重箱のスミをほじくり返すがごとき大同小異なロック・バンド群を見せられるより、こうした機会だからこそ、世界にはいろいろな音楽があるということを知りたいのである。

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