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03/10/2007

■Cornerious "from Nakameguro to Everywhere" Tour リポート Part 2

 「From Nakameguro to Everywhere」ツアーの東京公演、2002年5月14日のライヴの模様をリポート。初出=「uv」誌

 君はコーネリアス「from nakameguro to everywhere」ツアーを、体験しただろうか?

 前号ではツアー開始前のゲネプロの様子をリポートしたのだが、今回はいよいよ本番、5月14日(火)東京・渋谷AXでのライヴを見てきた。もともと音の良さでは定評のあるヴェニューであり、今回のコーネリアスのツアー会場としては最適だろう。

 ショウの趣向そのものは、もちろんゲネプロ(本番直前の通しリハーサル)で見たものと大筋においては変わらない。映像の一部に多少手が入れられていたようだったが、印象を大きく変えるようなものではなかった。

 だが、それでも、ぼくは感動した。

 「Point of View Point」に始まる新鮮な驚きに満ちたオープニングで一気に観客の気持ちを引き込み、「Brazil」の色彩豊かでゆったりとした幸福感に満ちたエンディングまで弛緩することなく引っ張り、まるでメビウスの環のように最初にいたところに戻っていく円環構造となった構成の卓抜、音と映像の完璧なシンクロ、そして映像のクオリティの高さなど、ここまで完成されたショウを見せつけられれば、わかっていても圧倒される。前号でも書いたが、まるで夢の世界で遊ぶような至福の時だったのだ。

 映像はシーケンス同期で合わせており、クリックを聴きながら正確なリズムをキープしなければならないドラマーをはじめ、迷路のように入り組んだアレンジをリズムのタイミングひとつまで完璧に再現したバンドの苦労は察するにあまりある。映像はPVの使い回しもあったが、そのひとつひとつが新たな試みとセンスに彩られ、およそ飽きるということがなかった。そしてなにより重要なのは、そうした苦労、汗のあとを微塵も見せず、素晴らしいエンタテイメントとして完璧に昇華していたこと。だから観客は何も余計なことを考える必要もなく、ただその世界に浸り込み、ゆったりと楽しむことができる。

 だがそれらはゲネプロを見た時点で予想がついていたことだ。ぼくが感動したのは、観客が目の前にいるというだけで、ここまで演奏が変わるのかということ。それは「Count Five or Six」のようなアップテンポのロック曲だとわかりやすいが、観客の反応がヒートアップするにつれ、その波動が伝わり演奏する側の気持ちがどんどん乗ってくるのが手に取るようにわかる。音が、演奏が生きているのだ。当たり前だが、これはゲネプロを見ているときには決してわからないことだった。なるほど、アーティストと観客の一体感とはこうして生まれるのだ。

 過去のツアーに比べると映像とパッケージされコンサート全体がコンセプト・ショウ的になったぶん、小山田のMCは少なめ。だが閉じた感じはまったくなく、実にフレンドリーでオープンな印象を受けた。それは、客をステージにあげてテルミンを弾かせたり、BOSSの小型サンプラーをステージ最前列の客に弾かせたり、といった趣向にもあらわれていた。これまでのツアーでも同じようなことがおこなわれていたが、今回はもっと観客と一緒にショウを楽しもうという姿勢がうかがえ、それをあざとくなく嫌みなくやれてしまう自信と余裕があったのだ。ステージ後方から観客をメンバーごとデジカメで撮り、その画像をステージ奥のスクリーンに映したりするアトラクションには、だれもがニッコリしてしまったにちがいない。それは、あまりも完璧に構成され、そのままでは息が詰まってしまうかもしれないショウに、いかにも小山田らしい遊び心を注入していた。計算づくといえばそうだが、彼の構えのない自然体の人間性が映し出されていたのだ。

 もし彼がいわゆるふつうの意味での歌のうまいヴォーカリストだったら、こんな素晴らしい世界を作り上げることができたろうか。歌唱力に頼った、というか歌唱力を活かすような音作りになるのが自然だろうし、そうである限りこんな万華鏡のような、テーマパークのようなトータル・アート表現を達成することはできなかったかもしれない。

 だが、にも関わらず彼の音楽には「歌」がある。その表現の根幹には歌心がある。アンコール。映像・音響など隅々まで計算された本編に対して、どうやらその日の気分で決めているらしいが、この日は『ファンタズマ』収録の「Chapter 8 ~ sea shore and horizon」。凝りに凝った音響ポップ・サウンドが続くなか、初めてと言っていいアコースティックでメロディアスなヴォーカル曲を歌い始めた小山田を見て、ぼくは不覚にも涙が出そうになった。自分の音楽は、表現はここまで来たけど、原点はここにあるんだよと彼はそっと宣していた。それは言葉にならないほど感動的な光景だったのだ。

 ぼくは小山田圭吾、そしてコーネリアスというアーティストと同時代に、そして同じ地に生まれたことを、心から誇りに思う。

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