■森脇美貴夫さん
『DOLL』10月号が届いたのでパラパラめくっていたら、編集長が森脇美貴夫さんから塚本利満さんに交代するという告知が載っていた。森脇さんが編集長をやめるという話は、例の輸入権問題で森脇さんの賛同をいただくため電話したとき聞かされていたけど、いざこうやって公になってみると、とても感慨深い。
確か『ZOO』(DOLLの前身)の創刊時は森脇さんが編集長ではなかったような記憶があるが(あいまい)、ほどなくして編集長になった森脇さんは、一貫して日本のパンク・ジャーナリズムを引っ張ってこられた。『ZOO』~『DOLL』のみならずさまざまな雑誌、ライナーなどでも健筆をふるわれ、さらにシティ・ロッカー、ドグマなどのインディ・レーベルを立ち上げ、スターリンやスタークラブ、リザード、アレルギーや日本初のハードコアのオムニバス『アウトサイダー』などを発売し、創生期の日本のパンク/インディペンデント・シーンに大きな役割を果たされたのである。
いや、こんなよそよそしい書き方は、やめよう。音楽評論家としてぼくがもっとも大きな影響を受けたのは、森脇さんだった。文体も、姿勢も、考え方も、なにもかもだ。ぼくはパンクのなんたるかを森脇さんの文で学んだのである。もうとうに絶版だが、JICC出版(現宝島社)から出た森脇さんのライナーをまとめた書『パンク・ライナーノーツ』は、長い間ぼくのバイブルだった。
ぼくがこの業界に関わるようになって初めて面識を得て、仕事上で深く関わった時期もあった。お互いの役割をまっとうしようとするあまり、激しい言い合いになったこともある。大先輩に対して、いまから思えば失礼極まりない話だが、ぼくも若かったのである。もちろん書き手としては駆け出しのころから現在まで、ずっと『DOLL』にはお世話になっている。
最近は年に1~2度電話で近況を報告するぐらいで、ライヴ会場でお会いすることもなくなっている。いまとなっては聴くものも、目指すところも、森脇さんとは大きく隔たってしまったことは否定できない。それでもぼくにとって森脇さんが尊敬する先輩のひとりであることに変わりはない。『DOLL』の編集現場から離れられてからもうずいぶん時間がたつようだから、今回の編集長交代は名を実質にあわせたというところだと思うが、それでも、ひとつの時代が終わったという感は強い。
もちろんまだ55歳の森脇さん、隠居するにはまだはやいから、編集長という重責から解放され、書き手としてさらに新しい境地を開拓していかれるものと期待している。とりあえず、おつかれさまでした。
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