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2007.01.26

■バンギャル ア ゴー・ゴー

Bangal


 雨宮処凛の小説。大槻ケンヂが「本の雑誌」で絶賛していたので買った。上下巻 900ページ超と長い作品だが、一気に楽しく読めた。

 ヴィジュアル系バンドの追っかけ少女たちのお話。前半は北海道在住の主人公が筋金入りの追っかけになるまでの過程を、後半は追っかけが嵩じて高校を中退して上京、さまざまな現実に直面していく様子を、実際にあったヴィジュアル系関連の事件を絡め描く。著者はXなどの追っかけをやっていた経験があるらしく、自伝的小説と言っていいだろう。

 もちろんオレは追っかけたことも追っかけられたこともないし、ヴィジュアル系バンドは仕事上でも個人的な嗜好でもまったく縁がないが、語られているエピソードや主人公の心情などはじつにリアルで、さもありなんという気がした。とくに上巻の前半、主人公がロックに目覚め、どんどんバンドの魅力にのめり込んでいく過程は迫力と勢いがあるし、ロックが好きなら、誰でも思い当たるところがあるんじゃないかな。オレも中学や高校のころを重ね合わせて熱くなったりした。ヴィジュアル系にまったく興味がないという人も、ロック、いや何かに目覚めて夢中になって、それまでの自分の生活や人生がまったく色褪せてしまったことがあったり、周囲との断絶や違和感に悩まされた経験のある人なら、共感できるところ大だろう。無理解な母親との葛藤のくだりや学校のつまらなさを嘆くところなど、痛い痛い。

 さまざまなエピソードが羅列され、その間に主人公の自分探し的な独白・自問自答が続くという構成。それぞれのエピソードに関連性がなく団子状に連なっているだけなので、お話としての流れは悪い。主人公の自分探しの旅も結局堂々巡りのまま終わり、結末も弱い。小説としての完成度は高いほうではない。が、ロックの魅力を(それが一面的なものであるにせよ)、ここまで平易に生々しい皮膚感覚で描いた作品は珍しいし、自らのアイデンティティのよりどころをロックやロック・アーティストに過剰に重ね合わせてしまう、きわめて日本的なロック事情に関する貴重な証言でもある。

 当然ファンの側からの小説なので、バンド側からの視点は語られないが、これはぜひ、ミュージシャンの方の感想も聞いてみたいもの。ファンっていうのはありがたいものと思います、ほんと。

著者による紹介


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2007.01.23

■ラウンジwell歌夢~ロック夜話

1/20 ラウンジwell歌夢

 8時前ぐらいに会場に到着。PCDJなので、さっそくセッティングを開始する。が、すでにイベントは始まっており、ほかのDJの方のプレイの最中にゴソゴソやったので、えらい迷惑だったと思う。すいません!

 そしていざ自分のプレイが始まってみると、なぜか音が小さすぎて全然ダメ。あれこれいじり、なんとか事なきをえたが、やはりセッティングはイベントが始まる前にちゃんと済ませておかねばならんと痛感。

 プレイそのものは、途中でモニターが利かなくなってカンでやったり、バタバタしたがなんとか無難に終わったかな。でもハウスで40分はやっぱり短い。四つ打ちのイベントを一度やりたいなあ。

 「ラウンジwell歌夢」はイベントというより飲み会に近い感じ。DJも踊らせるというよりはBGM担当という感じだが、これぐらいゆるい方がいいかも。機材はすべてスタッフの方の持ち込みで、ほんとうにご苦労様でした。呼んでくれた主催者の方、来ていただいた方に感謝。

1/21 ロック夜話
 ロック夜話もこれで12回目。隔月開催だから、丸2年やってきたことになる。

 今回のマイアミは、実績もキャリアも知名度も、これまでゲストに出ていただいた方々と比べればないに等しい新進気鋭。それだけに動員が若干心配だったが、フタをあけてみれば超満員とはいかないまでも、そこそこお客さんも入って、楽しいイベントとなった。若く可愛い女子ふたりのノリについていけないオッサンのブサイクな司会ぶりを笑っていただけたなら、幸いです。マイアミのおふたり、そして来ていただいたみなさん、ありがとうございました。

 次回は3周年記念というとこで、ちょっとにぎにぎしくやろうかと思っています。来月には詳細を発表できるはず。次回開催は3/18(日)です。

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2007.01.20

■ロック夜話vol.12 +小野島DJイベントのお知らせ

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 さて、年明け早々にイベントが二発。1月第三週の週末です。

Miami

◎ロック夜話 vol.12
1月21日(日)18:30~
@円盤(高円寺)http://www.enban.org/
チャージ:1000円(1ドリンク付)
ゲスト:miami
http://homepage2.nifty.com/miami/
司会:小野島 大
:アーティストの愛聴盤を聴きながら、そのアーティストの音楽的背景や創作の秘密に迫るトーク・イベント。

 おなじみロック夜話もこれで丸2年続いたことになります。そこで今回はポップでファニーな女子2人組、miamiのおふたりをお招きします。テクノ・ポップ~ロウファイ・ラップなど、その音楽性はそれぞれの判断にお任せしますが、見た人全員そのキュートな魅力の虜になってしまう噂のマイアミ。かって私は「あふりらんぽとハルカリの間にある何か」という表現をしたことがありますが、ほんとにユニークでキュートな人たちです。お喋りだけでなく、あれこれ趣向を凝らしてお届けする予定。この機会にぜひ彼女たちの魅力に触れてみてください。コバヤシアイさん、えらくやる気になってます。詳しくは後報! このエントリーで更新していきますので、お見逃しなく。

 それからもうひとつ。こういうイベントでDJします。

◎「ラウンジwell歌夢」
1月20日(土曜日) 19:00~23:00
@下北沢el mago http://r.gnavi.co.jp/g504200/
チャージ:1000円(1ドリンク+お通し)
DJ:ヤツザキ(東京)ケムタ(佐賀)オカモト(愛知)小野島大(大阪)放蕩(東京)
■ラウンジwell歌夢とは?
スナックwell歌夢の姉妹イベント。
普段スナックwell歌夢ではかからないよな暗かったり、地味渋だったり、長かったり、マイナーだったりな曲を中心にかけて呑んだり話したりする「おとなのwell歌夢」(妹イベントなのに姉より大人)を目指しております。

 ……だそうです。お近くの方は一杯ひっかけついでにどうぞ。けっこうご飯が美味しいお店だそうですよ。私はPCDJで、ゆったりめのハウスをかけるつもり。

 では、お待ちしてます。このエントリーはイベント当日まで一番上にきます。

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2007.01.19

■Basement Jaaaaaaaaaaxxxxxxx!!!!!

ライヴ評書きました。@朝日新聞1/18付夕刊

Basement_1


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2007.01.15

■エクストリーム・ナイト~バッファロー・ドーター

1/13
*エクストリーム・ナイト@青い部屋

 定期的に催しているイベント。主催は古い友人だが、初めて参加した。

 着いたときにはアウラノイザズをやっていた。きれいな音楽だったが、あえてもう一度聴こうとは思わない。
 続いてFilth featuring 伊東篤宏(Optrum)。バンド名はスワンズの曲名からとったと思われるが、音もそんな感じ。1曲目がかっこよかった。
 Chaos Royale。スキンヘッドの白人によるオールド・スクールなノイズ・インダストリアル。火なんかも燃やしたりして派手な演出だったが、音楽やパフォーマンスの善し悪しより、「エクストリーム」とされる音楽が現在置かれている状況の辛さを思ったり。30年前だったらえらい衝撃だったに違いないこの種の音楽も、今となっては「あー頑張ってるねえ」ぐらいにしか受け取られない。あらゆる音や技法や方法論が出尽くし、たいていの刺激には慣れっこになってしまった現在的状況は、「極端な音楽」をやろうとする人たちには、なかなか厳しいものがある。
 山本精一+ミトfromクラムボン+七尾旅人。完全即興による初共演。ヴォーカル入りの即興ってどんなやねんと思ったが、大変にディープでスリリングな体験だった。山本さんはドラムなんかも叩いていた。曲調が激しくなると、突然ミト君が長髪を振り乱してヘッドバンキングし始めたのが面白かった。

 青い部屋は初めて行ったが、なかなかデカダンな感じで、ある種のイベントにはよさそう。昔からの知り合いのS君がDJをやってるゴス・イベントを発見したり。

 続いてタクシーで代官山ユニットへ。
Buffalo Daughter presents: Euphorium Vol.1

 バッファロー・ドーター主催のオールナイト・イベント。なんでも800人以上集まったそうで、ユニットは終始ものすごい人出。逃げ場が少ないので、ハシゴでは少々つらかった。

 バッファロー+フェルナンド・カブサッキ。張りのあるいいパフォーマンス。セッションは曲を決めてのカブサッキの客演。緊張感の中にもまとまりのある演奏だった。
 にせんねんもんだい。何度か見てるけど、こんなだったっけ? 同じフレーズを延々と繰り返すミニマルな演奏。ディスコ・パンク的といって差し支えないだろう。前はジス・ヒートみたいな感じだったと記憶しているが……でもこれはこれで悪くない。そろそろ疲労がたまっていたころで、もう少し元気な状況だったらガンガン踊りたかったところ。
 次はカヒミ・カリイだったはずだが、ぼんやりしていたので、聞き逃してしまった。
 SENSUOUS THINGS 。コーネリアスの変名バンド。プレス向けのショウ・ケースを含め、「SENSUOUS」後のコーネリアスを見たのはこれで3度目だが、ショウ毎に演奏の精度があがり、映像とのシンクロが緻密になってる。ツアーが死ぬほど楽しみ。小山田が「Music」の歌詞をまるまる1コーラス分忘れたのはご愛敬。
 シュガーさんのメタルチックスの最中に疲労がピークに達し、そのままリタイア。何度も見ているバンドとはいえ、失礼なことをした。すいません……
 よって最後に予定されていたはずのバッファロー+小山田セッションは見逃した。

1/14
 翌日は終日ぼんやり。仕事をやる気にもなれず、木村拓哉のドラマ「華麗なる一族」を見る。キムタクや北大路欣也はじめ、俳優の演技や、NHK大河ドラマばりの音楽がいちいちおおげさで深刻ぶっていて、大時代で笑えた。昭和41年の街並みを再現したセットは豪華。なんであんなVIP一族の正月の集いなのに、ホテルの食事は個室をとらないんだ?とか、ツッコミどころは満載。鈴木京香がいい味を出していた。

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■ベースメント・ジャックス~リリー・アレン

11日:ベースメント・ジャックス

 楽しかった! この人たちは絶対に客の期待を裏切らないねえ。素晴らしい。詳しくは朝日新聞で。

12日:リリー・アレン

 レコードの印象からM.I.A.みたいな感じかと思ったら全然違った。ちゃんとした生バンドがついて、レコードよりはるかにオーガニック。バンドも手堅く、アレンジもソツがない。レコードジャケのイメージから、なんとなくはすっぱな印象があったが、もっと地に足がついている。とはいえ喋りながらクスクス笑うところなど若い娘らしい華やかさもある。スペシャルズのカヴァーなんかもやっていたが、スカっていうよりはロック・ステディに近い。おじさんはかなり気に入ってしまいましたよ。音楽性は全然違うが、ノラ・ジョーンズみたいになればいい。
 決まってもいないのに「フジロックに出たーい」と二度も言っていたが、なんでもお父さん(有名なコメディアンらしい)がパレス・オブ・ワンダーに出演したことがあるらしく、そのときカラオケで2~3曲歌って、フジロックの雰囲気は知っているらしい。大歓迎ですよお嬢さん。

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2007.01.13

■CDの整理をしていて思ったこと

 正月はたまりにたまって収拾がつかなくなっていたCDの整理などをやったわけですが、とにかくアーティスト名やタイトルがわかりにくいCDが多すぎる! 

 特に邦楽で、アルバム・タイトルやアーティスト名がアルファベット表記の場合なんだけど。

 文字要素をデザインされたロゴでジャケット等に配するのはいいとして、その過剰に装飾されたデザイン・ロゴを帯にまで使うのはやめてほしい!! ジャケットはおろか帯の表から背から全部が同じデザイン・同じロゴで、アルバム・タイトルだかアーティスト名だかわからないばかりか、なんと書いてあるのかさえも不明なもの多数で、ほんとに整理に困ってしまう。

 いや、もちろんオレの都合だけで言ってるんじゃないですよ。

 そもそも帯っていうのはCDショップの店頭で、一目でそれと判別できるようにするためにつけるものでしょ? ジャケット・デザインやバンド・ロゴを見ただけですぐにそれとわかる熱心なファンだけじゃなく、たまたまラジオで聞いて気に入ったのでCD屋に買いにきたとか、そういう人にもアピールするためでしょう? もしかしたらCD屋の店頭でなんとなくジャケットを眺めているうち、そういえばあのフェスでこんなバンドがいたなって、思い出す場合もあるでしょう? そんなときに帯を見てなんていう名前のバンドだか読めないようじゃ、帯の意味がない!
 
 お客だけじゃなくて、お店の人だってうっかりするとアーティスト名とタイトルをごっちゃにして、全然見当違いの場所に展示しちゃって、そのまま一生日の目を見ず返品……なんてことがあるかもしれないですよ。そうなったら損するのはお店だけじゃなくレーベル、最終的にはアーティストです。

 不思議なことに洋楽ではそういうのはほとんどない。帯には購入を決めるための必要最低限の情報が記してあるのが普通だけど、邦楽はとにかく不親切。何のための帯なんだか不明なものが多すぎる。一部の洋楽みたいな安っぽい宣伝コピーを書けとは言わないけど、せめてバンド名とアルバム・タイトルだけは、わかりやすく読みやすい活字で表記してください。もちろんアーティストなりデザイナーなりのデザイン上のこだわりがあって、無粋なザザインの帯なんぞつけたくないと思っている場合も多いだろうけど、それならいっそ帯はナシにして、上にわかりやすく情報を記載したステッカーでも貼ってほしい。CD制作上、帯をつけるのとステッカー貼るのがどちらがコストがかかるのか知らないですけどね。

 もちろんデザイン優先を徹底して、視認性や利便性などハナから考えないっていうなら、輸入盤みたいに帯もステッカーもなしでいいんじゃないでしょうか。自主盤ではそういうのは多々あるし、オレも普通に買ってる。でも困ったことに、うちにサンプルを送ってくるような、メジャー(あるいは、それに準じるような大手インディ)発売の製品に、先に書いたような中途半端に不親切なものがけっこう多いのである。絶対損してると思うんだけどなあ。昔ツェッペリンの「IV」が、ジャケットにバンド名もタイトルも一切記載されてないっていうんで話題になったけど、なんせツェッペリンですから。「ハナから全然売る気がないのが素晴らしい」というほめ方をするときがあるけど、この場合ちょっと問題が違う気がする。こういうやり方をアーティスティックな主張とかこだわりというのは、無理があるんじゃないかな? 

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2007.01.12

■超絶的な体験

Yg_full_system2

 少々古い話だが、去る6日に和田博巳さんのお宅にうかがったときの話などを。

 和田博巳さんは「ステレオサウンド」誌などで健筆をふるっておられるオーディオ評論家。音楽ファンには「はちみつぱい」のベーシストでプロデューサーというほうが通りがいいだろうか。ぼくは何回かお仕事をご一緒させていただいたり飲みにいったり親しくさせていただいている。今回の訪問の目的は和田さんのオーディオルームの見学である。

 和田さんはYGアコースティックスというイスラエルのオーディオ・メイカーのスピーカー、アナット・リファレンス・スタジオというシステムを所有しておられる。これはメイン・モジュールと言われる2ウエイ密閉型のスピーカーと、パッシヴ・サブ・ウーファーに分かれている。和田さんはメイン・モジュールのほうのみ所有しておられたが、年末になってついにパッシヴ・サブ・ウーファーのほうも購入され、ペアで600万円という超ド級システムを完成されたので、野々村文宏さん、鈴木茂さんとともにお年賀も兼ねて押しかけたわけである。

 アナット・リファレンス・スタジオのとんでもない音の良さは和田さんの文章からも十分察することができたが、いやはやこれはすごい。一番すごいと思ったのはジャズなどバンド演奏の空気感。クリアで明晰な音がするのは現代スピーカーとして当然として、奥行きのある音場感、文字通り目の前でバンドが演奏しているようなリアルさが圧倒的。まず和田さんおすすめのジャズのSACDなどを聞いていくが、あまりに音がいいので、音楽の内容も5割増しぐらいによく聞こえる。正直、音場感の再現はウチのシステムが一番苦手にしているところなので、システム全体の価格とグレードがちがいすぎるとはいえ、少々がっくりきてしまう。おそらくパッシヴ・サブ・ウーファーは、こういう微妙な空気感の再現にもっとも威力を発揮するはずだ。和田さんの話によればパッシヴ・サブ・ウーファーは50ヘルツ以下しか受け持たせておらず、通常のCDではそのあたりの帯域の低音はほとんど入っていない。だからかなりの音圧を入れても、見た目にはサブ・ウーファーが働いている印象がない。だが音全体のふわっとした余裕や空気感の形成に、確実に寄与しているはずだ。そのためだけに300万円超。ちょー贅沢な究極の世界である。

 和田さんのお宅は完全防音のリスニング・ルームで、部屋の広さは12畳ぐらいかな? もちろん調音は完璧だ。うちのリスニング・ルームも防音仕様だが、来たことのある人は知っている通り、かなり狭くて3人も入れば満員の狭い空間だ。システムのグレードの違いもさることながら、このエアヴォリュームの違いは決定的で、音楽がのびのびとストレスなく鳴っているのがよーくわかるのである。


 続いてぼくが持ってきたバトルズのアルバム(EP)を聞くが、こういう音場感というより、ひたすらダイレクトで硬質で打ち付けるような音圧感で聞かせるようなソースは、うちのシステムがもっとも得意とするところなので、さっきのジャズものなどよりはほんのわずか肉薄している気がする(あくまでも「気がする」というだけだが)。

 そして真のクライマックスは、続いてかけたコーネリアスの新作と、ニルヴァーナのリマスター・ベスト。とにかく、一般家庭では絶対にありえない、耳鳴りがするような超巨大音量で聴くコーネリアスと「Smells Like Teen Spirit」のとんでもない衝撃。和田さんも調子にのってどんどん音量をあげていく。ここはライヴハウスか?と思うほどの音圧だ。大音量フェチでは人後に落ちないぼくもさすがに少しヴォリュームを落としたほうがいいんじゃないかと思うが、和田さんは意に介さない。アナット・リファレンスで聴くニルヴァーナ、とんでもないですよ。以前某渋谷のハウス系クラブで聴いた「Smells Like Teen Spirit」もいい音だったけど、ロックの音じゃなかった(ハウスやテクノの音)。でもこれはロックの音です。ひえー

 ニルヴァーナが終わる。全員「すげー」というアホみたいな感想しか湧いてこない。気を取り直してさて次、と思うと、音が出ない。調べてみるとパワー・アンプが死んでいる。リンC4200という良質なアンプだが、見事にオシャカになってしまった……。やはりあの爆音に耐えられなかったか。あれはどう考えても一般家庭で鳴らす音じゃななかったもんなあ……

 じつはぼくには前科がある。まずは某オーディオ誌の試聴で、エラックというドイツのスピーカーのツイーターをぶっ飛ばした。それからウチのリスニングルームで、ギターウルフ/ストラグル・フォー・プライドのスプリット・シングルを爆音で聴いて、ツイーターを飛ばした。今でもウチのスピーカーのツイーターは死んだまま。修理品が届くまで、お店の好意で代替品のスピーカーを聴いている始末である。

 ヴォリュームをいじったのはぼくではなく和田さんだが、それでもぼくが関わっていることに違いはない。まして今回は個人の私物だ。二度ならず三度までも、しかもわざわざ他人の家のアンプをぶちこわしにきたのか……ひたすら恐縮、そして自己嫌悪。

 考えてみれば、コーネリアスを聴いているときから、なにか危うい、いやーな予感はしていたのだ。ふだんからこのソースを聴きこんでいる者にしかわからないかもしれない、綱渡りでもしているような、スピーカーのコーンが焦げているような、音像の奥の方が不気味な軋み音をあげて、断末魔の悲鳴をあげているような不気味な感触……
 「散る間際っていうのは本当に(ちょっとやばげな)いい音がするモンなのだな」と和田さんは書いておられたけど、正直、あの危うさは心臓に悪い……。はい、チキンなオイラです。

 ところが10分~15分ほどたって改めてスイッチを入れてみると、電源が入ったのである。どうやらあまりに過大な負担をアンプにかけすぎて発熱がすごくなって、一時的に保護回路が働いたらしい。さすがの和田さんもこんなけったいな体験は初めてのようだったが、原稿のネタにできますかねえ。笑い話で済んで良かったが、ともあれそのあとは少し音量を控えめにして楽しんだ。なかでもベッチ・カルバーリョ『すばらしき世界』のアナログの、これまた驚愕の音の良さが印象的だった。

 あまりにオーディオ体験が強烈だったので、そのあとのPS3によるブルーレイ・ディスク・フルHD・100インチスクリーンによる鑑賞は、正直あまり覚えていない(酔ってたしな!)。確かに画質はすごいと思ったけど、アナログ→CDや、VHS→(LD)→DVDのような決定的な使い勝手の向上がないと、画質や音質の少々のアップ程度では、なかなか次世代DVDは普及しにくいのではないか、とも思った(SACDやDVDオーディオのように)。

 そんなわけで新年早々、強烈としか言いようのない体験をさせていただいた。音楽好きなら、1回ぐらいこういう心臓に悪い体験をしておいたほうがいいかも。お招きいただいた和田さん、企画してくださった野々村さん、つきあってくれた鈴木さんには感謝。

 しかし我がウサギ小屋リスニング・ルームとの決定的な差を感じたことも確かである。たとえ小金をためてグレードの高いシステムを購入しても、今の部屋じゃまったくポテンシャルを活かせないことは明白である。となるとより広いリスニング・ルームを手に入れるしかないわけだが、そんなの絶対無理だよなー。こりゃ「東京タワー」みたいなベストセラー小説でも書いて一発当てるしかないか? でも両親は健在だしなー。

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