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2008.05.07

■NINの新作と音楽ソフトの未来

GWまっただ中の5日に突然発表され、大反響を巻き起こしているナイン・インチ・ネイルズの新作(もう!)『The Slip』。

Nintheslip

 これが配信先行、配布される4種のフォーマットはいずれも完全無料という太っ腹である。
 
 http://theslip.nin.com/

フォーマットは4種類

high-quality MP3s (87 MB)
will play in any MP3 player. encoded with LAME at V0, fully tagged.

FLAC lossless (259 MB)
CD quality - will not play in itunes or many other popular media players.

M4A apple lossless (263 MB)
CD quality - will play in itunes.

high definition WAVE 24/96 (1.2 GB)
better-than-CD-quality 24bit 96kHz audio

アートワークやクレジットはPDFで添付。

 7月にはCDやアナログでも発売するらしいけど、こっちはさすがに有料だろう。でもそうした物理メディアの売り上げで制作費をリクープするというよりも、ツアーなどで収益を確保するつもりなんじゃないかな。さすがに天下のトレント・レズナー、そういう割り切り方はさすがだ。

 前の「Ghosts」はほぼビートレス/ヴォーカルレスのアンビエント・アルバムだったが、今回はヴォーカルが入ったちゃんとしたロック・アルバムで、ナイン・インチ・ファンなら納得なはず。

 まあ正直言って私にとってNINの旬は「The Fragile」で終わっているわけだが、タダなら文句のつけようがない。MP3はかなり音質がやせているので、ダウンロードの手間はかかるが最低でもアップル・ロスレス以上のファイルを聞くことをおすすめする。重低音のノビがちがうよー。

 ダウンロードはMP3以外はBit Torrentでの配布。BitCometが日本語化されてて使いやすい。

 しかし同じ配信先行でも、レディオヘッドみたいにビットレートの低い音質の劣るMP3じゃなく、CDクオリティ以上のフォーマットを気前よく無料配布なんだから、トレント・レズナーの本気度がわかる。レコード会社の制約がなくなって、配信なら作品も思いついたときにほぼ時間差なしでリリースできるわけだし、こうしたやり方がほかのアーティストにもたらす影響は大きいだろう。CDを超えるマスターテープ・クオリティの高音質が売りのSACDなどの次世代CDはほぼ壊滅状態だが、配信ならそうした音質もデータという形でを手軽に制約なく提供できる。トレントのような音質へのこだわりが強いアーティストには魅力的だろう。

 こうした動きをみると、音楽ソフトは10年後にはヴァイナルと、WAVやFLACなど音声データ形式のみが残り、CDは消滅するって予測もまんざら妄想ではなくなってきた。著名なハイエンド・オーディオメイカーで、現在でも最高峰のアナログ・プレイヤーの「LP12」の製造/発売でおなじみのLINNから、こんな商品が出ちゃうぐらいだから。 こうした動きについていけないレコード会社やオーディオメイカーは衰退する一方だろう。

 先日、恒例の『オーディオベーシック』誌の対談試聴会で、RME Fireface 400を始めとするUSB/Fire Wire端子つきのDAコンバーター(オーディオインターフェイス)をいくつか聴いたのだが、比較のため用意した70万超のCDプレイヤーでCDを聴くより、私のノートPC(レノボのごく普通のもの)にCDからリッピングしたWAVファイルをオーディオインターフェイス(だいたい15万~25万ぐらい。DTM用が多い)で再生したほうがはるかに音が良かったのは衝撃だった。音楽業界もオーディオ業界も、大きな変わり目の時期にきているのかもしれない。

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