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2008.12.17

■恐れ入りました(Shine a Light)

シャイン・ア・ライト

 マーティン・スコセッシの撮ったストーンズの映画。2006年秋にニューヨークのビーコン・シアーでやったライヴを撮影・編集したもの。昨日ようやく見たんですが、これ、すごいですわ。もう、ほんとに圧倒的すぎる。途方もないエネルギーの爆発と持続。もうもどかしいほど月並み過ぎる感想しかわいてこないが、やはりこの人たちは怪物、化け物としか言いようがない。恐れ入りました。

 ストーンズの近年のライヴ・セットはすべてスタジアム・サイズにあわせて組み上げられているし、パフォーマンスもなにもかも、数万とか十数万の客と、それを収容するサイズの会場に見合ったものになっている。だから本来であれば2800人収容というビーコン・シアターは完全にキャパ・オーバー。もともと楽器演奏がうまいというタイプじゃないし、大きく引き延ばした写真が、そばで見ると粒子が荒くて見れたモノじゃないように、アラをさらけ出すんじゃないかと思ったら、まったく逆。スタジアムを覆い尽くし飲み込むストーンズの膨大なエネルギーが、2800人規模の小ホールに凝縮されて、その密度と濃度がとんでもないことになってる。全編息を抜く余裕なんてまったくなくて、その濃さ重さ熱さに窒息死しそう。もともとこういうシチュエイーションでの演奏はふだんより50%ぐらいパワーアップしちゃうタイプだが、それにしてもこのエネルギーは尋常じゃない。

 見所はありすぎるほどたくさんあるが、なんといってもミック・ジャガー御年64歳! もうすごいですよ。全20曲以上を息も切らさず歌いあげるだけじゃなく、とにかく演奏が続いている間は飛んだり跳ねたり踊ったり客を煽ったり、ほんとに一時たりともじっとしていない。ギター・ソロとかやっている間も、ぼんやり突っ立っていたり無造作に歩いたりは絶対ない。客に見られ注目されていることを常に意識して、一瞬も緊張感を緩めることなく動き続け、客の目を楽しませ続けるたぐいまれな芸人根性は、まさにプロの鑑だ。そしてその動きのほれぼれするほどのキレの良さ! プリンスなんかもすごいけど、あれは黒人音楽芸能の継承者としての動き。ミックの場合はまさにロック・ヴォーカリストのカッコ良さを凝縮したような動きで、その鮮やかさと激しさには、改めて惚れ惚れした。2時間半もの間、あれだけ激しく動き回れるのは相当のトレーニングを積んでいる証拠だが、決して筋肉強化してマッチョ化せず、薄い胸とスリムのジーンズの似合うスリムさを保っているのは、ミックなりの「ロックのかっこ良さ」の美学へのこだわりなんだろう。

 ジャック・ホワイト(ホワイト・ストライプス)やクリスティーナ・アギレラ、バディ・ガイなんかとデュエットするが、バディ以外には完全圧勝。まあこういう共演では、古くはライヴ・エイドのデヴィッド・ボウイを例に挙げるまでもなく、異様に燃えて目立ってしまう人なので、若い共演者のエネルギーを吸い取って、さらにバケモノ化している。

 ただしバディ・ガイに関してはミックの負け。そもそもこのじいさん(当時72歳)は若い頃からギターは切れ味抜群だけどヴォーカルは弱いとか言われているわけだが、とんでもないですよ。その声量のとてつもないデカさと声の太さ、存在感。そりゃマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフやライトニン・ホプキンス級と比較すれば別だろうが、まだまだ白人のロック小僧なんぞには負けはしないというわけだ。鍛え方も基礎体力ももまったく違う感じ。もちろんギターは最高で、感激したキース・リチャードが、演奏後すぐステージ上で、自分の弾いていたギターをバディにプレゼントしちゃうほど。

 そしてキースさん! もう終始ニコニコと嬉しそうだが、なんといっても見せ場は「ユー・ガット・ザ・シルヴァー」で、ギターを置いてヴォーカルに専念して歌う場面。人前でギターを持たずキースが歌ったことって、これが初めてなんじゃないかな。ちょっと照れくさそうに身をよじって歌う様子が最高にチャーミングだ。

 もちろんキースもチャーリー・ウォッツも、年相応に円熟した境地を見せるわけだが(ロン・ウッドなど、まだ小僧に見える)、枯れてるとかアブラが抜けたという印象はない。全体の印象としては結成45年もたってる人間国宝とは思えない、渋さ知らずのギラギラのテンションだ。若いころのような毒や危険さは薄れたけど、それはロックが置かれている状況の変化でもある。演奏する曲はすべて80年代以前の曲ばかりだが、懐メロめいた後ろ向きなダラダラ感、気持ちの悪い客とのなれ合い感はまったくなく、すべての曲が、スピード感のある完全に現代のロックとしてかっこよく演奏されていたのは驚くべきことだ。完成度の高さとか味わい深さなんてクソクラエ。そう、これこそが、(ヘタクソで猥雑なところも含め)ぼくの知るストーンズなのである。

 率直な印象としては、ストーンズがなによりも一番好きだった中高生のころに完全に戻されてしまった感じ。途方もないエネルギーをもらって、なんだか体中に異様なまでの活力がわいてきて、元気になってしまった。最近のストーンズの大スタジアムでの予定調和なイベント(ライヴというよりは)にはすっかり愛想を尽かしていたけど、さすがにやればできるんだな。スタジアムでは拡散し薄くなってしまったバンドのエネルギーが、ここでは最高濃度に達している。何度かU2(のライヴ)こそが現代ロックの最高値と書いたことがあるけど、この映画を見る限り、全面的に撤回せざるをえない。これは断じて、ぼくがストーンズ世代だからじゃない。およそこの映画を見ない限り、ロックの魅力について語ることなんてできやしないと断言しておく。たぶんDVDでもそのエネルギーは伝わると思うけど、できれば映画館(それも音響設備の良い新しい館)の大画面で見てほしい。いやあ、ほんとうにすごかったわ。おなかいっぱい。トシとって少々カラダにガタがきたって、弱音なんて吐いてる場合じゃないと思い知らされましたよ。元気になるなあ。

 映画館ではモッズの森山に遭遇! いや、面識ないんですが、赤い皮ジャンにスリムのブラック・ジーンズと、まさにロッカーそのものの出で立ちでしたなあ。 

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